岐阜県は、1966年(昭和41年)竣工、老朽化が進んだ県庁舎の再整備(建替え)事業を行っています。
新県庁舎は地上21階・高さ106メートルの行政棟と地上6階・高さ32メートルの議会棟の2棟で構成され、事業費は524億円(予算額ベース)というビッグプロジェクトです。
2022年6月時点で建物の外観はおおむね完成しており9月の竣工に向けて仕上げ工事が進められているものと思われます。
「岐阜県新県庁舎」の概要
まず場所についてみてみましょう。
岐阜県庁は、岐阜市西部の郊外部に立地しています。近くには岐阜市と大垣市を結ぶ幹線道路である国道21号「岐大バイパス」が東西に走っています。交通量が多く、沿道にはさまざまな業種のチェーン店舗が多く出店していて典型的な車社会の地方都市という様相です。
一方、鉄道利用だと最寄り駅はJR東海道本線西岐阜駅ですが、約1.4キロメートル離れていて歩くにはやや距離があります。コミュニティバスなどが運行されていますが本数は多くはありません。このほか、JR岐阜駅や名鉄岐阜駅からのバス便も運航されています。
配置図です。新県庁舎は現在の県庁舎の東隣りに建設されています。周辺にはOKBぎふ清流アリーナという県立の総合体育館・多目的ホールと岐阜県警察本部が立地しており官庁街を形成しています。
外観図です。コンセプトは行政サービスを着実に担う「県政の拠点」と豊かな自然と伝統文化に彩られた岐阜県の魅力を発信する「『清流の国ぎふ』の象徴」です。
このため、高い耐震性や災害時の機能維持、ユニバーサルデザイン、省エネ・省資源対策やライフサイクルコストの低減・長寿命化、再生可能エネルギーの活用など必要な機能が基本方針として取り入れられています。
各階の構成です。水害対策として地下階は設けられず、機械室が最上部にも設けられています。また、20階には展望ロビーも設けられ一般にも開放される予定です。
岐阜県新庁舎の概要は以下のとおりです。
建設地 | 岐阜市薮田南 地内 |
敷地面積 | 158,561㎡(公園等を含む) |
法定建ぺい率・容積率 | 80%・400% |
用途地域等 | 商業地域・防火地域 |
主要用途 | 事務所 |
構造 | 行政棟:鉄骨造、免震構造(一部耐震) 議会棟:鉄骨造、耐震構造 |
建築面積 | 行政棟:7,637㎡ 議会棟:3,312㎡ |
延床面積 | 行政棟:68,303㎡ 議会棟:13,937㎡ |
高さ | 行政棟:106m(他に鉄塔等あり) 議会棟:32m |
建設工事費 | 行政棟:445億円 議会棟:79億円 |
着工 | 2019年7月 |
現地の様子(2022年6月)
建設地北東側からの様子です。右側の高い建物が行政棟、左側の建物が議会棟です。
行政棟のアップです。まだ一部足場とシートが残っていますが、外観はおおむねあらわになっています。なお、デザインアドバイザーはあの隈研吾氏とのことです。
議会棟のアップです。当たり前かもしれませんが、行政棟と共通性を持たせた意匠となっています。
新県庁舎の建設と並行して県庁前公園の整備も進められています。
旧県庁舎です。この庁舎は取り壊されたあと、県税事務所などが入る「県民サービス棟」が建設される予定とのことです。
現段階では新旧の県庁舎が並び建っています。旧県庁舎もそれなりに大きな建物ですが、新庁舎はやはりそれ以上の存在感です。
低層階はガラス張りになっています。
上層階のアンテナが庁舎っぽい感じです。ヘリポートは火災時に逃げ遅れた人の救助用に設けられるとのことです。
岐阜県警察本部です。2006年1月に完成した鉄骨鉄筋コンクリート造11階建ての免震構造を採用した建物で、こちらもかなり立派です。
北西側からの様子。右から岐阜県警察本部、旧県庁舎、新県庁舎が建ち並びます。
2022年9月中旬に竣工、開庁は2023年1月4日!
世の中にはいろいろなことを調べる人がいるもので都道府県庁舎の高さをランキング化したwikiサイトがありました。
それによると最も高いのは東京都庁第一本庁舎の48階建て・243.4メートルです。続いて群馬県庁舎(33階建て・153.8メートル)、茨城県庁舎(25階建て・116.0メートル)、香川県庁舎(22階建て・113.0メートル)と続いて5番目に岐阜県新県庁舎が入ります。
ただし、静岡県や千葉県、石川県など他県の県庁舎(別館含む)も高さ100メートル前後の建物が多く、岐阜県新県庁舎が際立って高いというわけではありません。
また、役所の庁舎の建替えなどがあると決まって出てくるのが、「税金を使っての新庁舎建設は不要、税金の無駄遣いはやめろ!」とか「そんなことにお金を使うのならば福祉にお金を使え!」といったような意見です。
確かにむやみやたらと華美な庁舎は不要ですが、岐阜県新県庁舎の計画を見る限り防災機能と環境性能を調和させた、庁舎建築として時代に合致したスタンダードなものですし、事業費のうち半分は積み立てた基金が充てられるとのことです。
そもそも大地震により非常時の指揮命令拠点たる県庁舎が全半壊して機能不全に陥ってしまっては話になりません。またIT化対応やそれによる業務効率の改善、来庁者サービスの向上を考えれば相応のスペックを持った新庁舎の建設は歓迎されるべきことでしょう。
今後ですが、2022年9月中旬に建物が竣工、11月にマスコミなどを対象とした内覧会、12月中旬には竣工式と一般向けの内覧会が行われ、開庁は2023年1月4日の予定です。