のりもの・交通関係

【庄内川特定構造物改築事業】県道枇杷島橋架け替えへ!新幹線や東海道線の橋梁も架け替えに

名古屋市西区と清須市の庄内川に架かる県道枇杷島橋の架け替え工事が進められています。

この工事は「庄内川特定構造物改築事業」の一環として行われており、先行して県道枇杷島橋が架け替えられ、時期は明確になっていませんが、JR新幹線庄内川橋梁とJR東海道本線枇杷島橋梁も架け替えが行われる計画です。

枇杷島地区は庄内川のネック区間

出典:庄内川特定構造物改築事業[JR新幹線庄内川橋梁]説明資料

2000年9月11日から12日にかけて、秋雨前線の停滞と台風の影響により名古屋市およびその周辺で観測史上最大となる豪雨に見舞われました。のちに「東海豪雨」と呼ばれるこの豪雨は各地に甚大な被害をもたらしました。

出典:庄内川特定構造物改築事業[JR新幹線庄内川橋梁]説明資料

今回取り上げる枇杷島地区は、庄内川の川幅が狭くなっているとともに県道枇杷島橋など桁下が低い橋が集中しており、東海豪雨の際は洪水が県道枇杷島橋の橋桁に衝突し、溢れる寸前になるなど、豪雨などで庄内川の水量が増加した場合のネック区間となっています。

枇杷島地区はリニア中央新幹線の開業を控え再開発が進む名古屋駅地区にも近いことから、気候変動の影響で激しくなる一方の豪雨によって、万が一庄内川の堤防が決壊するような事態が発生すれば東海豪雨を上回るような甚大な被害が発生する事態も憂慮されます。

このような事態を避けるために行われているのが「庄内川特定構造物改築事業」です。枇杷島地区の橋梁の改築を行い、庄内川の流下能力を向上させ、洪水の軽減を図るために行われます。

具体的には県道枇杷島橋、JR新幹線庄内川橋梁、JR東海道本線枇杷島橋梁の3本の橋梁が架け替えられる計画です。このうち県道枇杷島橋については、2021年に架け替え工事に着手しており、本記事の執筆時点である2022年8月の段階では、県道枇杷島橋の西側に仮橋が架けられた状態です。

一方、JR新幹線庄内川橋梁とJR東海道本線枇杷島橋梁の2橋について、事業者である国土交通省中部地方整備局庄内川河川事務所は、鉄道事業者との調整を進めているとしていますが、未だ見通しは立っていないようです。

事業の概要は以下のとおりです。

名称庄内川特定構造物改築事業
事業費684億円
事業期間2002年(平成14年)度~2031年(令和13年)度
事業内容橋梁架け替え、築堤、掘削
出典:庄内川特定構造物改築事業[JR新幹線庄内川橋梁]説明資料

橋梁架け替えのイメージ図です。橋桁の数が減らされるとともに高さも高く架け替えられます。

現地の様子(2022年8月)

名鉄東枇杷島駅で下車、3分ほど歩くと県道枇杷島橋が見えてきます。

枇杷島橋の架け替えについて解説されています。枇杷島橋は車でよく通るのですが、いつもなにか書いてあるな、で通り過ぎていました。今回歩いてみて初めて内容をじっくり読みました。

西側には既に仮橋が架けられています。

仮橋を西側から見ます。下をくぐる県道は東海豪雨のときは水没していたと思われます。

さらに西側にはJR新幹線と東海道本線の橋梁が。両線とも列車の運行頻度は非常に高いです。なお、東海道本線については、貨物線として使用されている稲沢線があり複々線となっています。

白く泡立っているのが「枇杷島床止」です。床止は河床の洗掘、低下を防ぎ、河道を安定させるために設けられるそうです。

清須市側に渡ってきました。仮橋を県道に接続させる工事が必要で、仮橋への移行にはまだしばらく時間がかかりそうです。

枇杷島橋の北東約250メートルには名鉄名古屋本線・犬山線の橋梁がありますが、こちらは架け替え対象にはなっていません。

枇杷島橋はよく渋滞しますが、架け替え後は4車線化されることから渋滞の解消にもつながりそうです。

北側には名鉄名古屋本線を跨ぐ枇杷島陸橋が見えます。行ってみましょう。

枇杷島陸橋は年代物で道幅が狭いことから自転車などの軽車両だけではなく、原付も通行禁止になっています。

枇杷島橋の架け替えと並行して、枇杷島陸橋も架け替えられる予定で、仮副道の工事が進められています。

枇杷島陸橋の少し西側には名鉄名古屋本線の西枇杷島駅があります。

かつての西枇杷島駅はホームの幅が非常に狭く、停車列車の発着時以外はホームに立ち入ることができませんでしたが、2021年1月に改良工事が完了し、ホーム幅が広げられています。

東側には名鉄名古屋本線と犬山線が分岐する有名なデルタ線があります。

橋梁架け替えにより氾濫リスクは大幅に低下、一方鉄道橋の架け替えは相当難工事か?

国土交通省は、50年に1度の大雨が降ったことにより想定される氾濫被害を浸水面積約6,100ヘクタール、浸水人口約52万人、浸水家屋数約24万世帯としていますが、「庄内川特定構造物改築事業」により、氾濫被害は解消されるとしています。

したがって、費用対効果は非常に高いといえ、一日でも早く進めるべきなのですが、問題は鉄道の橋梁の架け替えが物理的にすんなり進むのかという点です。

鉄道の場合、仮橋を造っても道路を走る車のように急には曲がれません。一日たりとも止めることができない鉄道の運行。すんなりと行える工法はあるのでしょうか? 非常に気になります。

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