名鉄瀬戸線「三郷」駅前で第一種市街地再開発事業が計画されており、駅前広場などとともに商業施設、公共公益施設、都市型住宅が整備されます。なかでも都市型住宅については、三菱地所レジデンスとフージャースコーポレーションが事業協力者に選定され、瀬戸線沿線で初となるタワーマンションが建設されます。
「三郷駅前地区第一種市街地再開発事業」の概要
名鉄瀬戸線「三郷」駅は愛知県尾張旭市にあります。尾張旭市は名古屋市の北東側の丘陵部に位置するベットタウンで人口約8万4千人の緑豊かな都市です。
「三郷」駅は尾張旭市内に4駅ある名鉄瀬戸線の駅の一つで、市内で最も利用者の多い駅であり急行も停車します。急行を利用すると名古屋市中心部の「栄町」駅まで約20分で行くことができます。
なお、「三郷」は“さんごう”と読みます。奈良県のJR関西本線にも同じ読み方をする「三郷」駅があり、埼玉県内のJR武蔵野線の駅に同じ字を書く「三郷」駅がありますが、こちらは“みさと”と読みます。
この三郷駅周辺ですが、市街地の更新が進んでおらず、駅前広場、道路などの都市基盤の脆弱さや交通機能の不足、地域の商業活力の低下、建物の老朽化など多くの課題を抱えています。このため、地元を中心に三郷駅を核とした一体的な街づくりの検討が2010年ごろより開始され、2013年には街づくり協議会が発足、2019年12月には「三郷駅前地区市街地再開発準備組合」が設立され、徐々に再開発に向けた機運が高まってきました。
そして、2021年8月に尾張旭市により市街地再開発事業が都市計画決定され、2022年3月29日に三菱地所レジデンスとフージャースコーポレーションが事業協力者に選定、事業協力に関する協定が締結されました。
再開発計画の概要は以下のとおりです。
名称 | 三郷駅前地区第一種市街地再開発事業 |
面積 | 約1.1ha |
建築面積 | 約4,800㎡から約5,500㎡ |
延べ面積 | 約30,000㎡から約33,000㎡ |
用途 | A棟:共同住宅、商業施設、公共施設 B棟:商業施設、駐車場・駐輪場 C棟:商業施設 |
スケジュール | 2022年度末(予定):市街地再開発組合設立認可・事業計画認可 2023年度末(予定):権利変換計画認可 2024年度~2027年度末(予定):解体工事着工~竣工 |
区域図です。今回の再開発事業の施行区域は三郷駅南側の黄色の部分となります。地権者の同意が得られなかったのか、北東側の一部が施行区域から外れています。また、駅北側の街区も駅前広場などが計画されていますが、2期事業として尾張旭市が行い、2024年以降の着工が予定されています。
パースです。駅前広場が設けられることにより車の乗降がスムーズになるほか、高層棟であるA棟を中心にB棟、C棟と3棟のビルが建てられる計画です。
ゾーニング図です。再開発事業に合わせ駅舎の改修や自由通路の整備も行われます。
立面図です。低層階に設けられる商業施設はそれなりの面積になることがわかります。
現地の様子(2022年4月)
再開発区域の南西側、瀬戸街道と森林公園通りが交わる「三郷」交差点からの様子です。
区域南側からの様子です。左端のマンションや瀬戸信用金庫の建物も区域に含まれているため今後取り壊しが行われます。
区域南東側からの様子。現在は営業していない書店のところまでが再開発区域となります。
その書店から北側に入った場所の様子です。この道路も拡幅され、駅前広場に通じるアクセス路になります。
区域東側の様子。現在は虫食い状になっているとともに敷地が細分化されていることがわかります。
市営の自転車駐輪場。無料で利用できますが、やや雑然とした感があります。かつてはこの場所に三郷市場という市場がありました。
三郷駅です。ホームは相対式で現在の駅舎は線路の北側にあります。ホーム内に跨線橋が設けられており上下どちらのホームにも行き来できますが、バリアフリーの設備はありません。
森林公園通りの様子。再開発区域は写真の左側になります。現在は瀬戸線の踏切と瀬戸街道と交わる三郷交差点がボトルネックとなり渋滞が慢性化しています。駅への送迎で停車する車が多いからか、路上にはポールが設置されていて車が停車できないようになっています。
森林公園通りを南にいくとこの地方では数少ないイトーヨーカドーがあります。その目の前にはスーパーマーケットのヤマナカもあります。
さらには瀬戸街道を西へゆくとスーパーマーケットのフィールを核店舗とするSUN GOという商業施設もあり比較的狭いエリアに商業施設が集積しています。そうなると再開発事業で建設されるビルにはどのようなテナントが入居するのか気になるところです。
イトーヨーカドーの立体駐車場から望む再開発予定区域の様子です。
周辺にも高い建物があります!
「三郷駅前地区第一種市街地再開発事業」で建設されるタワーマンションの高さは現時点では明らかになっていませんが、周辺では群を抜く高さになることは間違いありません。
実は尾張旭市にはすでに高さ70メートルの建築物が存在しています。城山公園の一角にある展望台を併設した公共施設「スカイワードあさひ」です。
展望台からの景色です。名古屋駅周辺の超高層ビル群まで見渡すことができます。すこし場所は違いますが、再開発で建設されるタワーマンションからもこれに近い景色を望めるのではないでしょうか。
建物ではありませんが、高さ245メートルのタワーが尾張旭市に隣接する瀬戸市にあります。
地上デジタルテレビ放送の集約電波塔として2003年から稼働している「瀬戸デジタルタワー」です。高さ245メートルは名古屋駅にあるJRセントラルタワーズのオフィス棟とほぼ同じです。ただ、残念ながら瀬戸デジタルタワーには展望台はありません。
ちなみに写真は古いものですが、瀬戸デジタルタワーの近くにあるゴルフクラブ大樹〈瀬戸〉から撮ったものです。320打席400ヤードと広大なゴルフ練習場で、飛ばせる人にとっては非常に気持ちのいい練習場です。私は一向に上達しないのでゴルフはほぼ止めてしまいましたが…。
今後も名古屋近郊都市駅前での再開発は続く?
今回ご紹介した三郷駅前ではこれから再開発事業が始まりますが、春日井市のJR春日井駅、刈谷市のJR刈谷駅、岐阜県多治見市のJR多治見駅など名古屋近郊都市の駅前でも再開発が行われタワーマンションが建設されています。
東京圏や大阪圏などと比べるとマイカーへの依存率が高い名古屋圏では、どちらかというと戸建て住宅志向のほうが強いイメージがありましたが、名古屋市内ではタワーマンションの供給が増え、近郊都市においても駅直結のタワーマンションが増えてきているという流れには時代の変化を感じます。
水面下で検討が行われ明らかになっていない計画がまだまだあるように思われます。今後も名古屋近郊都市駅前での再開発は続いていくのではないでしょうか。