名古屋市立大学病院は、救急・災害医療のさらなる機能拡充を図るため、「救急・災害医療センター(仮称)」の建設計画を進めています。
新施設の開棟は2025年の予定で、地上8階建て、延床面積約2万7600平方メートルという規模は救急医療施設として日本最大級となります。また、免震構造のエレベーターが設置されるとともに300床程度の仮設ベッドを置けるスペースが確保され、発生が懸念されている南海トラフ地震などの大災害時には重症患者の重要な受け入れ拠点となります。
現在、建設予定地の外構取り壊し工事が行われており、2022年9月に建設工事が始まる予定です。
「名市大病院 救急・災害医療センター(仮称)」の概要
名古屋市立大学病院(名市大病院)は、1931年に開院した名古屋市民病院がルーツであり、名古屋市立大学の附属病院として許可病床数800床と35の診療科を有する名古屋都市圏の中核医療機関です。
また、2021年4月には名古屋市立東部医療センター(千種区、522床)と名古屋市立西部医療センター(北区、500床)が名古屋市立大学に移管され、同大学の附属病院となり、3病院を合わせた病床数約1800床は全国の国公立大学で最大規模を誇ります。
しかし、高齢化の進行により救急患者の搬送数の増加が見込まれ、さらなる病床数や救急医の確保など受け入れ態勢の拡大が求められるとともに南海トラフ地震などの大災害時の救命救急拠点として計画されたのが「名市大病院 救急・災害医療センター(仮称)」です。
完成予想図です。救急車は名古屋環状線からスロープで2階救急フロアに19秒で直行でき、救急車が最大14台停められる救急ヤードが設けられるとのことです。また、感染床や感染対策手術室も設けられパンデミック対策も十二分に講じられています。
「名市大病院 救急・災害医療センター(仮称)」の概要は以下のとおりです。
敷地の地名地番 | 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1番地1-1、1-2 |
用途 | 病院 |
構造 | 鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造) |
高さ | 36.508m |
階数・棟数 | 地上8階 地下1階 10棟 |
敷地面積 | 64,917.92㎡ |
建築面積 | 6,030.72㎡(全体29,535.80㎡) |
延べ面積 | 30,564.52㎡(全体183,309.63㎡) |
工事着手予定時期 | 2022年9月1日頃 |
建築主 | 公立大学法人 名古屋市立大学 |
設計者 | 山下設計 |
工事施工者 | 未定 |
現地の様子(2022年7月)
名市大病院は、名古屋環状線と八熊通が交わる「桜山」交差点の南東方向に位置しています。奥に見える大きな建物が2003年に竣工した病棟・中央診療棟で鉄骨造地上18階、地下2階建て、延床面積は66,615㎡です。施工は清水建設、設計は「名市大病院 救急・災害医療センター(仮称)」と同じ山下設計が担当しています。
地下鉄桜通線「桜山」駅からもすぐの立地です。工事に伴い病院入口への通路が変更になっています。
「名市大病院 救急・災害医療センター(仮称)」は駐車場だった場所に建設されます。建設工事に向けて外構などの取り壊し工事が行われています。
建築計画の概要です。2022年5月9日に設置されました。
このあたりに救急車用のスロープが設けられるのでしょうか。
建設予定地の全景です。駐車場であった場所に建設されるので敷地東側に立体駐車場が建設されています。
県内3つめの高度救急救命センターに指定されるのか?
救急医療体制は一次救急、二次救急、三次救急の3段階に分類されます。
一次救急は比較的軽症者を対象としたもので休日夜間診療所や在宅当番医制で対応します。二次救急は手術や入院が必要な症状の重い救急患者を受け入れるもので、いくつかの病院が共同連帯して輪番方式で対応します。三次救急は二次救急では対応できない高度な処置が必要な重篤患者を受け入れるもので救命救急センターなどが対応します。
三次救急のなかで、広範囲熱傷や指肢切断、急性中毒などの特殊疾病患者に対応する特に高度な診療機能と設備を備える医療機関が高度救命救急センターであり、全国に46施設あります。2022年7月8日に奈良市での街頭演説中に銃撃された安倍元首相がドクターヘリで搬送された奈良県立医科大学附属病院も高度救命救急センターに該当します。
愛知県内で高度救命救急センターに指定されているのは長久手市の愛知医科大学病院と豊明市の藤田医科大学病院の2施設です。
「名市大病院 救急・災害医療センター(仮称)」は県内3つめの高度救命救急センターに指定されるのでしょうか。愛知県より人口の多い都府県でみると、高度救命救急センターに指定されているのは東京都で4施設、神奈川県で2施設、大阪府で3施設です。