名古屋の老舗百貨店である松坂屋名古屋店が大規模にリニューアルされます。
リニューアルは本館を中心に行われ、対象面積は全館面積約8.7万平方メートルのうち約2.7万平方メートルとなります。2024年11月に本館4階がオープンするのを皮切りに2026年秋の北館6階まで続く予定です。
本館や北館は建築後かなりの年数が経っていることから建て替えを期待する向きもありますが、どうなるのでしょうか?
本館は100年選手!
まず松坂屋名古屋店を構成する建物について整理しておきましょう。
松坂屋名古屋店は、北側から「北館」、「本館」、「南館・新南館」の3棟に分かれており、さらにその南側にある名古屋PARCOも運営は松坂屋と同じJ.フロントリテイリングです。
写真上は久屋大通側、下は大津通側から見た本館です。この本館ですが、建築時期が異なる6つの建物で構成されています。最も古い部分は1925年4月に建てられているので間もなく100年になろうとしています。
こちらは北館です(写真左の建物)。1972年11月に建てられておりこちらは50年選手です。現在は「GENTA(ジェンタ)」という名称で、高級ブティックやゴルフ用品、時計売場などが入っています。
南館・新南館には婦人服売場のほか、ヨドバシカメラや美術館などが入っています。建築されたのは1991年3月です。
松坂屋名古屋店リニューアルの概要
さきほどお伝えしたとおり、2025年に本館が現在の場所に店舗を構えてから100年になろうとしています。この節目に未来に向けた大規模リニューアルが行われることになりました。 リニューアルの概要は以下のとおりです。
リニューアル面積 | 約27,000㎡ (24-25年リニューアル範囲、全館面積:86,758m2) |
増収目標 | 26年度:+42% (対23年度実績、リニューアル対象フロアにおける、総額売上高ベース) |
投資額 | 約63億円 (24-25年リニューアル範囲) |
展開ブランド数 | 211ブランド (リニューアル対象フロアにおける) 新規展開:89ブランド(うち、東海地区初:49ブランド、国内初:2ブランド) |
売場面積の変化 (対リニューアル前) | ラグジュアリー:+40%、アート:+145%、婦人服:-61%(既存ブランド対比:-72%) |
また、リニューアルオープン時期は下記のとおりです。
2024年11月中旬 | 本館4階 |
2024年11月下旬 | 本館3階/北館地下1階 |
2024年12月中旬 | 本館5階(レディスファッション)/本館8階 |
2025年春~夏 | 本館5階(こども服)/本館6階/本館7階/本館屋上 |
2025年秋 | 北館6階 |
今回のリニューアルで建て替えは遠のく?
本館・北館はそれぞれ100年、50年選手であることから、そろそろ建て替えが行われてもおかしくはない状況でしたが、今回これだけの大幅なリニューアルが行われることから建て替えは遠のいたのでしょうか?
大丸松坂屋百貨店によると、今回のリニューアルの狙いは「次世代顧客(高質・高揚消費顧客層)へのアプローチ」と「体験価値の向上」の2点とのことです。
百貨店という業態が曲がり角を迎えるなか、これまでの外商顧客を中心とする比較的高年齢の富裕層の顧客のみならず、彼ら彼女らの子供世代を取り込んでいく必要があること、そのためには来店機会を増やす取り組みが必要であるというのが背景にあるようです。
また、J.フロントリテイリングは、錦3丁目の旧栄広場(栄角地)の「ザ・ランドマーク栄」の開発にも子会社が関与しており、当面はこちらにも注力する必要があります。
したがって、松坂屋名古屋店については、当面はどちらかというとソフト面の向上に力を入れ、百貨店建物の建て替えというドラスティックな投資はまだしばらく先ということなのかもしれません。
建て替えの時期ですが、早くて2030年代、もしかしたら2040年代以降になるのではないでしょうか。
百貨店の建て替えという意味合いでは、名古屋栄三越や旧丸栄(現マルエイガレリア、隣接の旧栄町ビルなどと再開発を検討中)の建て替え計画同様、答えが出るのはまだまだ先のようです。