リニア中央新幹線の名古屋以西のルートは、整備計画で奈良市付近が主要な経由地とされているのみでルートそのものや駅の場所は未だ明確になっていません。
現在、有力とされているのは、三重県と奈良県を経由し大阪府に至るルートです。
このうち三重県の停車駅について、2021年1月、地元自治体や経済団体などで構成される「リニア中央新幹線建設促進三重県期成同盟会」が亀山市を県内駅の設置候補に決定、同年10月には、亀山市が候補地として市内東・南部地域の3案を示しています。
この候補地3案が2022年度中にも一本化され、JR東海に提案される予定です。
亀山市内の候補地3案について
亀山市が示している候補地3案は、①JR関西本線井田川駅付近(エリアA)、②東名阪自動車道亀山インターチェンジ(IC)付近(エリアB)、③JR紀勢本線下条駅付近(エリアC)です。それぞれの候補地について見てみましょう。
JR関西本線井田川駅付近(エリアA)
亀山市が示しているエリアの特徴は次のとおりです。
東西方向に国道1号、南北方向に国道306号が通過するとともに、地域高規格道路「鈴鹿亀山道路」の計画もあり、広域的な道路アクセス性が高い。
JR井田川駅の乗り換え利便性を確保することにより、鉄道によるアクセス性が高まる。
規模の大きな住宅団地が立地するとともに、市北東部の産業拠点や鈴鹿市西部の市街地等にも近く、産業・商業面等での相乗効果が期待できる。
基盤造成や施設構造の工夫により洪水ハザードに対応すれば、まとまりのある一段の土地が活用可能であり、既存市街地と連携したリニア駅周辺整備が期待できる。
現在の井田川駅の様子です。国道1号(25号と重複)へのアクセスは良好ですが、亀山ICまでは約8キロメートル程度あります。
亀山市の最東部に位置し、鈴鹿市に隣接しています。鈴鹿市側は近鉄鈴鹿線平田町駅を核とする住宅地となっており、大型ショッピングセンターであるイオンモール鈴鹿も立地しているほか、鈴鹿サーキットへのアクセスも容易です。
一方、洪水ハザードへの対応が必要といった点が懸念されそうです。
東名阪自動車道亀山IC付近(エリアB)
亀山IC・スマートICや、国道1号、東名阪自動車道、伊勢自動車道、名阪国道との交通結節点に近接し、新名神高速道路も含め、広域的な道路アクセス性が高い。
JR亀山駅への乗り換え利便性を確保することにより、鉄道によるアクセス性が高まる。
民間産業団地「亀山・関テクノヒルズ」等の産業拠点や、重要伝統的建造物群保存地区「関宿」等の歴史文化資源にも近く、産業・観光面等での相乗効果が期待できる。
既存市街地と一体的なコンパクトなまちづくりによる効果的な都市機能の集積・連携が期待できるとともに、洪水ハザードの危険性も低い。
亀山パーキングエリアの様子です。ハイウェイオアシスやスマートICも併設されています。
亀山ICです。名古屋方面から東名阪道を走ってくるとここで伊勢自動車道(津・伊勢方面)と名阪国道に分かれます。自動車利用の場合、非常に利便性の高い場所といえ、リニア駅にバスターミナルが設けられれば広域アクセスの拠点にもってこいといえそうです。
亀山ICからはJR亀山駅も比較的近い場所にあります。
JR亀山駅はJR東海とJR西日本の境界駅で、JR紀勢本線の始発駅でもあり交通の要衝ですが、三重県内は近鉄が圧倒的に強く、JRも名古屋から津方面への特急や快速は伊勢鉄道経由のため亀山駅を通らないことから、各方面とも1時間に1本程度の運行でローカル感が漂っています。
JR紀勢本線下条駅付近(エリアC)
東西方向に複数の県道、南北方面に国道306号と複数の県道が通過し、伊勢自動車道芸濃ICにも近接することから、広域的な道路アクセス性が高い。
JR下庄駅やJR亀山駅への乗り換え利便性を確保することにより、鉄道によるアクセス性が高まる。
県都や主要観光地の鈴鹿サーキットにも近く、産業・学術研究・観光面での広域的な連携が期待できる。
丘陵地を中心に未開発のまとまりのある一段の土地を有し、リニア駅整備を契機とした面的整備による将来的な拡張性も高い。また、丘陵地のため、洪水ハザードの危険性も低い。
現在のJR下庄駅の様子です。非常にローカル感が漂う佇まいで、駅周辺は小さな集落があるのみです。逆にいうと、将来的な拡張性は高いともいえそうです。
亀山市の最南東部で、津市北東部と境界を接しています。伊勢自動車道芸濃ICへは直線距離で3キロメートルほどです。県都である津市に近いというメリットはありそうです。
候補地の一本化後、JR東海による環境アセス実施へ
一部報道では、候補地3案は2022年夏にも一本化されるとされていますが、三重県は2022年3月29日付で「リニア三重県駅基礎調査業務委託にかかる企画提案コンペ」を実施することを公表しており、その納期が2023年3月20日までとされていることから、早くても2022年度末となるのではないでしょうか。
余談ですが、三重県在住の知り合いが、
天皇陛下が伊勢神宮を参拝される際にいちばん便利な亀山インターの近くになる!
と話していました。地元ではまことしやかに噂されているようです。確かに一理ありそうですが、はたしてどうなるのでしょうか。
一本化した候補地の提案を受けたJR東海は2023年ごろから環境アセスメントの手続きに着手すると想定され、今後、「計画段階環境影響配慮書」の中で3キロメートル幅の概略ルートや直径5キロメートル円の概略駅位置が示される予定です。