名古屋市港区の中川運河沿いで東邦ガスがまちづくりを進める「みなとアクルス」にライブハウス型ホール「PORTBASE」とプロバスケットボール「ファイティングイーグルス名古屋」(FE名古屋)のホームコートとなる新アリーナが新設されることが相次いで明らかになりました。
「PORTBASE」は2025年3月、FE名古屋の新アリーナは2026年秋に開業予定です。
今回の記事ではこれらの施設が設けられる「みなとアクルス」のまちづくりについて振り返ったあと新設される施設の詳細について見てみたいと思います。
東邦ガスが進める「みなとアクルス」のまちづくりは第Ⅱ期へ
みなとアクルスは1998年に稼働を停止した東邦ガス港明工場の跡地で進められている名古屋市内でも有数の大規模開発事業で、その規模は約33ヘクタール(バンテリンドーム名古屋約6個分)に及びます。
地下鉄名港線「港区役所」・「東海通」の2駅を利用可能なほか、名古屋高速東海線「港明」入口に近接し、エリア内には市バス停留所も設けられています。
エリアの西側には中川運河が流れ、その支流の港北運河がエリア内に流れ込んでおり、ウォーターフロントの少ない名古屋にあって希少な水辺の空間を有しています。
また、エリアの中央を南北にJR貨物名古屋港線が走っています。
エリアはN(ネクストライフ)・E(エンジョイ)・W(ウィル)・S(スポーツ)の4ゾーンに分かれます。
2015年から第Ⅰ期開発が進められ、2017年3月、Eゾーンにエネルギーセンターが竣工、2018年9月に「ららぽーとみなとアクルス」が開業したことによりまちびらきしました。
Nゾーンでは三井不動産レジデンシャルにより「パークホームズLaLa名古屋みなとアクルス」(265戸・2020年竣工)、「パークホームズLaLa名古屋みなとアクルス ガーデンスクエア」(238戸・2023年1月竣工)という大規模マンションが供給されています。
前者は2019年3月の販売開始から12か月で全戸完売、後者は2023年4月時点で残り22戸となっています。
Nゾーンのうち名古屋港線西側は、現在ららぽーとの暫定駐車場として利用されていますが、第Ⅱ期開発で整備される予定とされています。近い将来、どこかのタイミングで再び数百戸規模の大規模マンションの建設が始まるかもしれません。
主にW(ウィル)ゾーンに該当する名古屋港線西側は仮囲いに覆われており、第Ⅱ期開発予定地となっています。第Ⅱ期開発は教育・医療・福祉などの複合業務施設を誘致予定とのことです。
PORTBASE建設の背景に東海地区のイベント会場不足が…
ライブハウス型ホール「PORTBASE」を開発・運営するのは合同会社ポートベイスという会社です。
出資者は大手芸能事務所のアミューズ、CBC・東海テレビ・名古屋テレビ・中京テレビ・テレビ愛知の在名民放テレビ局5社、チケットぴあ名古屋、コンサートホールZeepを運営する「Zeepホールネットワーク」を有するソニー・ミュージックエンターテイメント、イベントプロモーターのサンデーフォークプロモーションの9社です。
「PORTBASE」が建設される背景として東海地区におけるイベント会場の不足があります。
2008年に愛知厚生年金会館(収容人数1,666人)が閉館(跡地は積水ハウスのタワーマンション「グランドメゾン池下ザ・タワー」に)、2010年には愛知県勤労会館(同1,488人)も閉館(跡地はスタートアップ支援拠点の「ステーションAi」が開発中)し、その後は名古屋市内に同規模の施設の建設はされていません。
また、「PORTBASE」と同規模の会場としてささしまライブにZeep Nagoya(収容人数:スタンディング1,864人/椅子使用741人)がありますが、年間稼働率は、ほぼ100%で、あぶれた公演が名古屋での開催を見送られ、結果的に“名古屋飛ばし”につながっているという指摘もしばしばされています。
今回、新設が計画されている「PORTBASE」の収容人数はスタンディングで2,280人、椅子使用で1,082人を予定しており、音楽コンサートだけでなく、演劇仕様も想定した機構を備えているほか、長期公演にも対応するとのことで、各種エンターテイメントの“名古屋飛ばし”を抑制する効果が期待されます。
「PORTBASE」の場所について確認しておきましょう。N・E・W・Sのいずれのゾーンにも属さない中央部のオーバルガーデンの西側に設けられるようです。地下鉄名港線の港区役所駅からキャナルウォークを通ってアプローチする形になります。
名古屋港線をくぐる通路が以前から設けられています。現在は通行できないようになっていますが、開業時にはきれいにお化粧されて導線が確保されるのではないでしょうか。
メインファサード(夜景)です。上方に向かって鋭角のロビーが特徴的ですね。また、奥に四角形の建物が描かれていますが、これはFE名古屋の新アリーナのような気がします。違うかもしれませんが。
入場口とロビーを正面から見たパース。例えば、ららぽーとのレストラン街の営業時間をライブ開催時には延長するなどすれば、相乗効果も発揮できるのではないでしょうか。
フロアマップです。ドリンクカウンターがあるのがライブハウスっぽいですよね。男女別のトイレや多目的トイレが複数設けられているほか授乳室もあります。
客席図面です。座席だと1000席強なので、名古屋にはもう一回り大きなホールもあと一つか二つくらいほしいところです。
「PORTBASE」の開業予定は2025年3月です。
FE名古屋の新アリーナは新B1リーグ参入のため?
ファイティングイーグルス名古屋(FE名古屋)はB.LEAGUE(B1西地区)に所属するプロバスケットボールチームです。総合商社の豊田通商が運営しています。
現在は名古屋市西区の枇杷島スポーツセンターをメインアリーナ、同千種区の千種スポーツセンターをサブアリーナとしています。
しかしBリーグは2026-27シーズンよりこれまでの競技成績による昇降格を廃止し、事業規模によるエクスパンションスタイルへ変更することが決まっています。
そのためのライセンス要件として平均入場者数4000人以上、新基準アリーナ(収容5000人以上など)の年間109日確保、売上高12億円以上が必要とされるようになります。
このためFE名古屋を運営する豊田通商は2022年11月22日に新ホームアリーナを建設することを公表していました。
その新ホームアリーナが設けられる場所が今回、みなとアクルスであると明らかになりました。 「PORTBASE」と合わせてかなりの活性化が期待できそうです。
FE名古屋の新アリーナの開業予定は2026年秋です。
みなとアクルスのまちづくりはまだまだ続く…
おそらくですが、FE名古屋の新アリーナは「PORTBASE」に隣接する形で中央部のオーバルガーデンの西側に設けられるのではないでしょうか。
となると、W(ウィル)ゾーンに該当する名古屋港線西側の広大な空き地の利用計画は未だ判然としない、ということになります。
「キッザニア」進出のうわさは以前からありますが、今回も明らかになりませんでした。もしかしたらさらにびっくりするような計画が出てくるかもしれないみなとアクルス。
まちづくりはまだまだ続くようです。