名鉄名古屋駅から名鉄岐阜行きの特急に乗って約10分、稲沢市の中心駅である国府宮駅に到着します。同駅は空港アクセス特急「ミュースカイ」を含む全列車が停車する名鉄名古屋本線の主要駅のひとつです。
その国府宮駅前で再開発の構想があります。名鉄名古屋駅から10分というアクセスの良さであればタワーマンションを期待したいところですが、現状の計画案では12階建て程度のマンションに留まるようです。
乗降客数では名鉄がJRを上回る
愛知県稲沢市は尾張地方西部、濃尾平野のほぼ中央に位置する市です。人口は約13.3万人(2022年4月現在)、名古屋市のベッドタウンとして発展してきましたが、植木や苗木、銀杏の産地としても有名で、天下の奇祭「国府宮はだか祭」でも知られます。
名古屋市内からの鉄道アクセスはJR東海道本線と名鉄名古屋本線の2線を利用できます。それぞれの代表駅はJRが稲沢駅、名鉄が国府宮駅ですが、JR稲沢駅は朝の一部の快速を除き普通列車しか停車しない一方、名鉄国府宮駅は全列車が停車し、乗降客数は名鉄国府宮駅が上回っています。
なお、両駅は離れていて、1.6キロメートルくらい距離があります。
再開発の計画案は?タワマンは建たない?
乗降客数では名鉄国府宮駅を下回るJR稲沢駅ですが、駅周辺では、かつて存在していた広大な操車場跡地を含めた大規模な区画整理事業が行われました。
タワーマンションこそ建っていないものの、230~290戸前後の高層マンションが3棟建つとともに大型商業施設「リーフウォーク稲沢」や豊田合成記念体育館エントリオなどが建っていて、すっきりとした街並みを形成しています。
一方、名鉄国府宮駅周辺は、区画整理事業自体は行われているので街並みは整然としているのですが、細分化された土地が多く、車社会で郊外に商業施設が分散されていることもあり駅前には集客力のある商業施設は皆無で、名古屋から特急で10分の駅前にしては、やや寂しい印象があります。
国府宮駅周辺の現状について、行政も手をこまねいているわけではありません。
近い将来のリニア開業を好機とすべく、名古屋圏における稲沢市の存在感向上を目指し、国府宮駅周辺を再整備する構想を打ち出しており、一定の方向性を示した報告書が2020年(令和2年)3月に「国府宮駅周辺再開発基本計画」としてまとめられています。
この基本計画によると現在三菱UFJ銀行などがある街区3,920平方メートルを対象に地上12階建て、高さ44メートルの店舗付き分譲マンション(137戸)を建築する計画が示されています。
たしかに様々な用途をコンパクトにギュッとまとめた計画ですが、容積率の関係などもあってこれ以上ボリュームを出すことは難しいのでしょうか?
やはり特急停車駅の駅前立地であれば、30階建てとか40階建てのタワーマンションは無理としても、せめて20階建てくらいのタワー型マンションが建てば、市のシンボルになるような気がするのですが…。
国府宮駅前と市内各所の様子(2022年5月)
今回の再開発予定区域と稲沢市内の各所をまわってきましたので様子をご紹介します。
名鉄名古屋から10分足らずで国府宮駅に到着します。
地下改札口から地上に出たところから見る駅西側の様子。
ロータリー南西側からの様子。左側のビルがパーキングを兼ねた駅舎ですが、地下改札口もあり、利用者は地下のほうが多いようです。
三菱UFJ銀行より南側の部分が整備区域に含まれます。
整備区域の北西側の様子。低層の建物や駐車場がほとんどで土地の利用効率は低い状態です。
国府宮駅の時刻表。本数が多く便利です。
「はだか祭」が行われる国府宮神社。アクセスは名鉄駅からのほうが便利です。
JR稲沢駅です。2000年に橋上駅舎化されました。
豊田合成記念体育館エントリオ。2020年9月に完成しました。豊田合成が関与するバレーボール、ハンドボール、バスケットボールなどの公式戦が行われるとともに稲沢市民への開放事業も行われています。
大規模マンション「エムズシティ稲沢」「ミッドレジデンス稲沢」「プレミアムフォート稲沢」の3棟が建っています。いずれも230~290戸程度の戸数を有します。
駅から離れた場所にも大規模マンションが見られます。
JR稲沢駅から比較的近い「リーフウォーク稲沢」ですが、来店客の多くが自動車利用と思われます。
市内西部にある「アピタタウン稲沢」も大規模な商業施設です。やはり自動車での移動が前提となっています。なお、ユニーの本社も同じ場所にあります。
稲沢市内で一番高い構築物が、三菱電機稲沢製作所内にあるエレベーター試験塔の『SOLAÉ』です。高さは173メートルあり、平坦な濃尾平野にあるので遠くからでもよく目立ちます。
タワーマンションが建てばよいというものではないが…
今回の記事は、名古屋からこれだけ近い場所なので、再開発されるとしたらタワマン含みの計画もあるのでは、と思ったことがきっかけで執筆しましたが現実はなかなか厳しいようです。
単に大きなものを造ればよいというものではなく、再開発事業は資金や法的規制の制約があるなかで非常にシビアな需要予測のもとに行われるということをあらためて認識しました。
ただ、せっかく再開発するのであれば、名古屋から電車で10分という絶妙な立地だけにびっくりするような再開発計画に見直しされないかな、とやはり淡い期待を抱いてしまいます。