
名古屋鉄道(名鉄)は、2025年3月24日付のニュースリリースで「名古屋駅地区再開発計画概要について」として、検討を進めている「名古屋駅地区再開発計画」について事業化を決定したことを公表しました。
計画の詳細については共同事業者間にて正式に合意した後に公表するとのことで、再開発ビルのパースなどは残念ながら明らかにされていませんが、2024年代前半の全体完成に向け、足掛け20年近くに及ぶ壮大なプロジェクトが始動します。
170m級の超高層ビルが2棟?
今回公表された再開発の概要です。
共同事業者 | 名古屋鉄道株式会社、名鉄都市開発株式会社、日本生命保険相互会社、 近畿日本鉄道株式会社、近鉄不動産株式会社 |
対象地 | 名古屋市中村区名駅一丁目2番他 |
敷地面積 | 約32,700㎡ |
延床面積 | 約520,000㎡ |
用途 | 商業、オフィス、ホテル、 鉄道駅、バスターミナル |
投資額 | 約5,400億円 (名鉄の開発事業投資額) |
名鉄による開発事業投資額は約5,400億円となります。これは、現在国内で行われている最大級の再開発事業の1つである「高輪ゲートウェイシティ」の総投資額が約6,000億円といわれており、これに近い金額となり名鉄にとっては社運を賭けたプロジェクトとなります。
なお、現在ヤマダ電機が入っている「大手町建物名古屋駅前ビル」は三井不動産系の所有であり、当初三井不動産も事業者に名前を連ねていましたが、結果的には同社は事業者には加わらず名鉄が不動産を取得したようです。

「都心における施設イメージ」として今回公表された図です。中央部の赤い建物が再開発ビルです。
これまで180メートル級の超高層ビルが3棟建つのではないかといわれていましたが、日経新聞の記事などによるとどうやら170メートル級が2棟になるようです。規模が縮小した感もありますが、延床面積は52万平方メートルが確保されており、集約することによりコストを抑えたといえるのかもしれません。
再開発ビルはかなり細長いビルになりそうで、「JPタワー名古屋」(図の青色に塗られた右から2番目のビル)に近いイメージになりそうです。ただし「JPタワー名古屋」の高さは約196メートルなのでこれよりはやや低くなりますが、横幅は「JPタワー名古屋」を大幅に凌ぎ、これが太閤通を挟んで2棟建つことになるので、日本国内では類を見ない“壁感”のあるビルが出現することになりそうです。
ホテルは名鉄系のみに
今回、用途構成イメージも公表されています。

少し前に報じられましたが、近鉄系はホテルや商業施設には参画せずオフィスビルのみの関与となるようです。
前回の記事で近鉄系のホテルとして「都ホテルズ&リゾーツ」が進出するのではと予想しましたが、見事はずれました。一方、名鉄系のホテルは「インターコンチネンタル」になるのでは、と当ブログでは予想していますが、答え合わせができるのはもう少し先になりそうです。
また、新聞報道などでは謎の空白ゾーンがあり気になっていたのですが、かなり巨大な駐車場が設置されるようです。このあたりは東京や大阪の再開発では考えられず、車社会の名古屋らしいといえば名古屋らしいです。

今回公表された全体スケジュールです。
名鉄名古屋駅は最終的には4線化されますが、2033年度の1期リニューアルでは「2線」となっており、4線化が完成するのは2040年代前半の2期リニューアルの完成を待たねばならないようです。
また、2033年度の1期本工事で開業するのはオフィス、商業施設(一部)、ホテル、バスターミナルとされていることから、さきほどの用途構成イメージと見比べると太閤通の南側、すなわち既に更地になっている名鉄レジャック跡地と今後解体される日本生命笹島ビル側が先に再開発されることになるようです。
リニア時代に向け“踊り場”脱却なるか?
先日発表された2025年の公示地価では、名古屋でもっとも地価の高い「ミッドランドスクエア」が対前年比で変動率が0%となり、専門家が名駅の地価は“踊り場”にあるというようなことを言っていたのを見かけました。
確かにリニア中央新幹線の建設は膠着状態、インバウンドの恩恵もあまり受けていない(個人的にはそれでよいと思っていますが…)ということであれば、さもありなんとも思いますが、名鉄による再開発計画の公表は久々に明るい材料となりそうです。
思えば、名鉄による当初の「壁ビル」案が出されたのが2017年なので既に8年が経過しています。石橋を叩きすぎだろ、とも思いますが、名古屋の再開発あるあるということで、今後のターミナルスクエアの整備、リニア中央新幹線の建設状況、そして名鉄による名駅再開発の行く末を今後もじっくりと見守りたいと思います。