愛知県一宮市の名鉄百貨店一宮店が2024年にも閉店する方針であることが明らかになりました。先日のロフト名古屋閉店の一報に続いてまたもや名鉄が関係する商業施設の閉店のニュースです。
名鉄百貨店一宮店が閉店すると名古屋市以外の愛知県内の主要都市から百貨店が消えることになります。
前身の百貨店を含めると50年超の歴史が…
名鉄百貨店一宮店は名鉄名古屋本線・尾西線の名鉄一宮駅に直結する駅ビル内に2000年11月にオープンしました。
売り場は地下1階から7階で、面積は約17,500平方メートルです。食料品や衣料品から仏具や宝飾品まで扱うほか、6階はカルチャーセンター(一宮中日文化センター)、7階はレストラン街(レストランズ138)になっています。
名鉄百貨店一宮店の前身の店舗は名鉄一宮駅から東に約500mの旧名鉄一宮線東一宮駅跡にありました。
名鉄と丸栄の共同出資の「名鉄丸栄百貨店」として今から54年前の1969年(昭和44年)に開業、1982年(昭和57年)に名鉄単独の運営となり、2000年9月まで営業を続けました。跡地は分譲マンション「エムズシティ一宮」になっています。
名鉄百貨店一宮店の売上高のピークは開業後間もない2003年の約111億円でしたが、郊外型の大型商業施設の進出やインターネット通販の普及などにより2022年は約59億円まで落ち込んだとのことです。
閉店のニュースが流れてから最初の土曜日となる2023年4月22日に店内の様子を見てきました。
名鉄一宮駅はJR東海道本線の尾張一宮駅と一体のコンコースとなっており、名鉄百貨店一宮店はこのコンコースに直結しています。
前週に取材した開店したてのイオンモール豊川と比べると寂しい感じはしたものの、まったく閑散としている、というほどではないようです。
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1階は女性向けの衣料品や雑貨とお菓子などの食料品売り場が併設されています。
2階の女性向けの衣料品売り場もあまり人がいませんが、こんなもんかなという感じです。
6階の催事スペースでは春の北海道物産展が開催されていました。手持ち無沙汰にしている売り子さんもいて、ここはやや寂しい感じがしました。
カルチャーセンターも入っており、地元民の文化的な交流拠点という機能も担っています。
7階のレストラン街。
空き店舗もありますが、
店によってはけっこう賑わっていました。
地下の食料品売り場はそれなりに賑わっています。名鉄は百貨店の閉店後、新たな商業施設を検討するとしていますが、少なくとも地下の食料品売り場は現在と近い形で残るのではないでしょうか。
コンコースには名鉄が展開する商業施設「ミュープラット一宮」があります。
2021年3月に第1期として6店舗が開業しましたが、まだ半分が空いています。
こちらはJR東海系の商業施設「アスティ一宮」です。
2022年10月にリニューアルオープンしたばかりで、もともと出店していた成城石井などのほか、生鮮3品やさまざまな総菜の店などが出店して充実感があります。
JR尾張一宮駅側には2012年に開業した「尾張一宮駅前ビル(iビル)」が建ちます。37万都市の玄関口にふさわしい威容を誇ります。
豊橋、岡崎、豊田、一宮と県内主要都市から百貨店が消滅
消費者の意識の変化や少子高齢化の進行、ネット通販の普及などにより全国的に百貨店という業態は衰退傾向にあり、山形県や徳島県などでは百貨店がゼロになっています。
愛知県内でも2020年に豊橋市のほの国百貨店と岡崎市の西武岡崎店、2021年に豊田市の松坂屋豊田店が閉店しており、名古屋市外では名鉄百貨店一宮店が愛知県内で唯一残る百貨店となっていました。
名鉄百貨店一宮店の閉店により愛知県内の名古屋市に次ぐ規模の都市(いずれも中核市)から百貨店が消えることになります。
ただ、特に名鉄百貨店一宮店については、JRであれば名古屋駅から尾張一宮駅まで新快速でノンストップで約10分、名鉄でも特急で約15分という時間距離、完全な車社会であることを考えるとむしろいままでよく頑張ってきたといえるのではないでしょうか。
名駅再開発を見据えたグループ事業最適化の一環か?
6月で閉店する名古屋・栄のロフト名古屋は名鉄グループの名鉄生活創研が運営していましたし、名鉄としては、流通事業の縮小を進めているようにも思われます。
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一方で布袋や東岡崎、神宮前などで商業施設を計画するなど、時代に合わせる形で事業の新陳代謝を進めています。
その先には同社にとって今後数十年のスパンで最大のプロジェクトとなる名鉄名古屋駅周辺の再開発を見据えグループ事業の最適化を模索しているのではないでしょうか。
名鉄の高崎社長は2023年4月4日の読売新聞のインタビューで名鉄百貨店の本店について「再開発後は今のような形で再現するのは難しい」と語っており、百貨店業態は残さないことを示唆しています。
そういった意味では、名鉄百貨店一宮店閉店後、後継となる商業施設は、名鉄名古屋駅再開発のパイロットケースとなるかもしれず、要注目といえそうです。