名古屋市中区栄1丁目で建設が進められていた「関電不動産伏見ビル」が2021年11月30日に竣工、稼働を開始しています。
ただ、まだ空き区画が多く本格稼働とはなっていない模様です。現地の状況を交えてお伝えします。
関電不動産伏見ビルの概要
まず立地をみてみましょう。ヒルトン名古屋がある広小路通の広小路中ノ町交差点を南にいったところにあります。L字型の変形した敷地の上に建築されました。
事業主体は?
「関電不動産伏見ビル」の事業主体はその名の通り「関電不動産開発」という会社です。
関西電力の100%子会社で分譲住宅事業、賃貸住宅や貸しビル事業のほか、不動産ファンド事業など不動産事業を総合的に手掛けています。2016年にはMID都市開発というパナソニック創業家である松下家の資産管理会社を源流とする不動産会社を吸収合併しています。
同社の事業は、関西電力が本拠とする京阪神が中心ですが、名古屋でも2012年に関電不動産高岳ビル(名古屋市東区泉2丁目)を供給しており、今回が2棟目のオフィスビルの供給となります。
設計施工は大和ハウス工業が担当しています。
ビルの概要は?
最新鋭のオフィスビルだけあって、72時間対応の非常用発電機や断水時に利用可能な雨水利用システムなどBCP対応に資する設備、Low-Eペアガラス、自動調光LED照明等による省エネ性能や関西電力の「再エネECOプラン」の導入によりカーボンフリーを実現するなど高いスペックを誇っています。
物件名 | 関電不動産伏見ビル |
所在地 | 愛知県名古屋市中区栄1丁目 |
アクセス | 地下鉄東山線・鶴舞線 「伏見駅」6、7番出口より徒歩4分 |
竣工 | 2021年11月30日 |
設計・施工 | 大和ハウス工業株式会社 |
構造・規模 | 鉄骨造・地上13階建 |
敷地面積 | 1,869.83㎡(565.62 坪) |
延床面積 | 13,804.01㎡(4,175.71 坪) |
基準階貸室面積 | 676.38㎡(204.60 坪) |
駐車場 | 機械式駐車場80台(内ハイルーフ16台) 平面駐車場11台 |
駐輪場 | あり |
天井高 | 2,800mm |
天井仕様・照明 | システム天井 スクエア型LEDライト 750lx(照度センサー付) |
床仕様 | OAフロア H=100mm |
床荷重 | 500kg/㎡(一部HDZ 1,000kg/㎡) |
空調設備 | 個別空調 基準階 4系統/1フロア |
電気容量 | 60VA/㎡ |
エレベータ | 4基 |
セキュリティ | 非接触カード制御・フロアセキュリティ |
BCP対応 | 非常用発電機 72時間 (共有部、貸室内の一部に電源供給) 雨水利用システム(WC洗浄水等) |
現地の様子(2022年1月)
ビルの北東側からです。周辺では近年、高層マンションの建設なども見られますし、周辺にはビジネスホテルも多い立地ですが、関電不動産開発は敢えてここにオフィスビルを建設しました。
東側正面の様子です。立派なファサードです。
南東側からの様子です。
南西側からの様子です。立体駐車場のほか、平面駐車場も11台分設けられています。
館銘板。シンプルです。
エントランスの様子です。よくみると胡蝶蘭が置いてあります。ビルの竣工祝いでしょうか。
稼働状況はまだ厳しいようだが…
関電不動産伏見ビルの貸室一覧は以下のとおりです。オフィス仲介業者のサイトなどをみるとまだ多くの階で募集を行っており、稼働状況は芳しくないようです。
階 | 貸室面積(㎡) | 貸室面積(坪) | 天井高(m) | 募集状況 |
13F | 809.46 | 244.86 | 2.80 | |
12F | 809.46 | 244.86 | 2.80 | 募集終了 |
11F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | |
10F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | 募集中 |
9F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | 募集中 |
8F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | |
7F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | 募集中 |
6F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | |
5F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | 募集中 |
4F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | 募集中 |
3F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | |
2F | 676.38 | 204.60 | 2.80 | |
1F | エントランスホール | エントランスホール | 3.80 |
関電不動産伏見ビルが竣工した2021年後半は、「イオンモール名古屋ノリタケガーデン」のオフィス部分である「BIZrium名古屋」や丸の内駅近くの「丸の内Oneビルディング」が竣工し、一時的にオフィスビルの供給過多となり、空室率を押し上げる要因となりました。
また、コロナ禍によるテレワークの普及などによりオフィス需要自体シュリンクするという見方もあります。
一方、関電不動産開発がこの地にオフィスビルを建設するという選択をしたということは勝算があってのことでしょう。
基本的には優良資産の長期保有、もしくはバリューアップ後、傘下の私募リートに移管という目論見だと思われることから、足元の稼働状況に一喜一憂するのではなく、長期スパンで優良テナントの確保を目指すのではないでしょうか。まずはお手並み拝見です。